ひぐちアサ『おおきくふりかぶって』解説あらすじ

は行の漫画作者

始めに

始めに

今回は自分の好きな野球漫画『おおきくふりかぶって』をレビューしていきます。

コマ割り、画風。背景知識

圧倒的なリアリズム

 この作品に特徴的なのは、なんといってもその圧倒的なリアリズムです。キャラクターの一人一人に伝記的生があって、その掘り下げが圧倒的です。例えばそれはドストエフスキーの作品群(『罪と罰』)や、黒澤明『七人の侍』、ジョジョシリーズ(1.2.3.4.5.6.7.8)、青木雄二『ナニワ金融道』などの作品を思わせます。とにかくキャラクターの一人一人を好きになってしまいます。

 画のスタイルは少し線画っぽい印象があり、デッサンがすごく上手いタイプではないかもしれないですが、それでも躍動感を持った筆致でスポーツを描いています。

スポーツのゲームメカニクスの中での戦略的コミュニケーション

この作品はまた、野球という制度の中での戦略的コミュニケーションの描写が圧巻です。それこそ『HUNTER×HUNTER』のような、制度の中での戦略的コミュニケーションの展開が圧倒的です。試合の一瞬一瞬にドラマがあります。

牧歌的な高校生の青春のドラマ

 試合の外でも選手たちの日常は続くのですが、この作品では、選手へのハラスメントも相手選手の陣営や主人公サイドのライバル格の過去などに描かれてはいるものの、全体的には牧歌的な男子高校生の日常が描かれます。吉田秋生のような雰囲気を感じさせる男子校あるあるや、BL風味な描写がなかなか魅力的です。本当に一人一人のキャラクターが愛おしく、好きになってしまいます。

テンポはスロー

連載からもうかなり経っている漫画ですが、まだ一年生の終わりくらいで、なかなか終わりが見えません。試合や日常の描写が圧倒的な密度なので、全く退屈はしないのですが、けれどもこのペースで完結できるのかは不安になります。

物語世界

あらすじ

 埼玉県の公立高校・西浦高校へと進学した三橋 廉は中学時代、祖父の経営する群馬県の三星学園野球部でエース投手でした。しかしチームメイトからは疎まれ続け、ネガティブな性格になってしまいます。三橋が西浦高校へと進学したのは、それが理由でした。

 西浦高校には、発足したての野球があり、部員は新入生ばかり10人です。しかも監督は、部員不足の野球部で、三橋はまたもエースを任せられ…。

総評

ありそうでなかった、心理劇中心の野球漫画

従来ありそうでなかった心理劇中心の野球ものになっています。一人ひとりの伝記的な生の厚みと戦略的コミュニケーションの機知に圧倒されます。

コメント

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