萩尾望都『11人いる!』解説あらすじ

萩尾望都

始めに

始めに

今日は萩尾望都『11人いる!』についてレビューを書いていきます。

スタイル、演出、背景知識

トランスジェンダーSF(ルグウィン、V=ウルフ)、パニックホラー

 本作品はトランスジェンダー表象を孕んだSFになっています。その点でル=グウィン(『闇の左手』)、V=ウルフ(『オーランドー』)の作品のようなトランスジェンダーSFとなっています。こうしたモチーフは『グノーシア』などの作品に受け継がれていきます。

 また本作は、宇宙船という密室空間を舞台とするパニックホラーになっています。その点でリドリー=スコット監督『エイリアン』、フーパー監督『スペースバンパイア』などと重なります。ただ完成度はずっと落ちます。

長編はよくない

 いきなりアレですが、萩尾望都は長編はあんまりよくないものが多いです。長編では『スターレッド』『ポーの一族』あたりはいいと思いますが、全体的に水っぽく、時々面白いギミックはあるものの退屈します。けれども基本的に短編作家です(『半神』『A-A’』)。

 本作品もトランスジェンダーのフロルなど面白い要素はあるものの、導入部分が面白いだけでオチも展開も中途半端です。

物語世界

あらすじ

 宇宙大学の受験生である主人公タダトス・レーン(タダ)は、最終テストである実技試験として、10人チームのメンバーとなり外部との連絡を断たれ、惑星「黒」の衛星になって公転周期53日で回り続ける宇宙船・白号の乗員として53日間船内にとどまることに。

 しかし白号に乗り込んでみると、そこは1人多い11人がいます。大学側に事態を知らせようにも連絡手段は司令室に設置された非常用赤ボタンのみであり、押せばチーム全員が不合格になります。試験合格のため11人は規定の53日間を過ごすことに決めます。

関連作品、関連おすすめ作品

・大江健三郎『燃え上がる緑の木』:トランスジェンダーSF

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