岡崎京子『リバーズ=エッジ』解説あらすじ

岡崎京子

始めに

始めに

岡崎京子『リバーズ=エッジ』解説あらすじを書いていきます。

スタイル、演出、背景知識

ヌーヴェルバーグ(ゴダール)流の青春残酷物語、ネクロフィリア(S=キング)

 『Pink』の記事と重複するので説明をやや端折りますが、岡崎京子はヌーヴェルバーグからの影響が顕著で、特にジャンリュック=ゴダール(『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』)流の青春残酷物語を特徴とします。

 本作は死体をめぐる青春物語になっていて、その点でS=キング『スタンド=バイ=ミー』からの影響を感じさせます。『スタンド=バイ=ミー』は四人の少年たちが行方不明の死体を探しに行く冒険物語で、死体を探すという行為はただそれを見つけて有名になりたいというモチベーションからなので、死体そのものに何か少年たちが思い入れや思うところがあるというのではないですが、本作は山田一郎や吉川こずえは死体に対して愛着を感じています。それは一体何に由来するものなのでしょうか。

死の崇高さ(ハイデガー)、反俗的主題

 死の崇高さを思いやることで生のあり方について問い直そうとする姿勢はメメント=モリという語も有名ですし、ハイデガーの実存主義もそのような主題を孕んでいます。山田一郎と吉川こずえは、二人とも生きずらさを感じていることから、死体というものに対して思うところがある模様です。

 山田一郎は美しい容姿ですが同性愛者であり、それゆえ生きづらさを感じています。社会の中で期待される生き方や振る舞いに違和感を感じ、それゆえ物言わぬ存在である死体に愛着を感じています。死体はずっと死んだままなので、何の変化もアクションも起こさないので、山田一郎にとってはそんな存在と対峙しているのが安心なようです。対人関係が苦手な人間の抱く固形性への愛着という意味では、村田沙耶香『コンビニ人間』を彷彿とさせます。

 一方で、吉川こずえは、消費社会のアンチテーゼとして死体を位置付けています。モデルとして期待される役割への倦怠感、ストレスから、死というものへの憧れを抱いています。いずれ訪れる死という存在は、生きることへの絶望を抱えているこずえにとってはある種、救いにもなっています。サリンジャー『ナイン=ストーリーズ』などに近いでしょうか。

 

物語世界

あらすじ

 女子高生で美少女でもある若草ハルナは、元彼氏の観音崎にいじめられている山田一郎という同級生を助けたことをきっかけに、彼から秘密を打ち明けられます。それは河原に放置された人間の死体でした。山田は人間の死体を見ることに喜びの感情を抱いていました。

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