青木雄二『ナニワ金融道』解説あらすじ

あ行の漫画作者

始めに

始めに

 今回は名作漫画、青木雄二『ナニワ金融道』についてレビューを書いていきます。

画風、コマ割り、ジャンル、背景知識

リアリズム、ドストエフスキー流の風習喜劇

 この作品は、青木雄二が私淑したロシア文学の作家、分けてもドストエフスキー(『罪と罰』)から強い影響を受けています。ドストエフスキー(『罪と罰』)という作家は、初期にはゴーゴリ流のロマン主義、リアリズムから創作をスタートし、スタイリッシュな工芸品のような作風を特徴としていましたが、『罪と罰』などから後期ドストエフスキー(バルザックの影響が顕著)の、まるでゴーゴリ『死せる魂』のような、圧倒的なリアリズムのスタイルが完成します。

 私に言わせてもらいますと、青木雄二の画風は、理想の後期ドストエフスキーです。決して上手い画ではないですが、キャラクター一人一人が生々しく、いっそ猥褻なまでに徹底したリアリズムで描かれています。この作品に描かれるキャラクターは誰もかもが、どうしようもなく愚かで、かつ魅力的です。バルザックに学んで独自のリアリズムの境地を確立した後期ドストエフスキーの完璧な翻案がここにあると言えます。

都会の栄光のドラマ。バルザック、スコセッシ的な立身出世の物語

 この作品は、ドストエフスキーや、それに影響したバルザックのような、都会の野心と栄光のドラマです。主人公・灰原は金融屋として、最初は戸惑いがありつつも、次第に野心をギラつかせ、出世を目指すようになります。バルザックやドストエフスキー、そのフォロワーのマーティン=スコセッシ監督の作品(『ウルフ=オブ=ウォール=ストリート』など)の主人公のような、都会に生きる青年の野心と自己実現をめぐるドラマになっています。

武田麟太郎、織田作之助流に、大阪の風俗を描く小説

 この作品はまた、大阪の風俗を生々しく、霰もなく、徹底的に描いてみせます。それはまるで、武田麟太郎、織田作之助などの作品を思わせます。

 モダニズムの中のリアリズム的な潮流に位置する麟太郎、作之助の作品は、それこそ元禄文学のように、大阪の社会風俗を徹底的に描写しています。本作もそうした作品群と重なり、どこまでも描きこむ線で徹底的に大阪の現実を描いています。

物語世界

あらすじ

 主人公・灰原は、勤めていた印刷会社が倒産し、再就職先として金融業を目指しますが、過去に金融会社から借り入れしていたため、どこへ行っても採用されませんでした。しかし面接に行った「株式会社帝國金融」で、追い込みに遭遇し、成り行きから現場に同行します。そこで金融業を自分の天職に決め、大阪一の金融屋を目指します。

総評

参考文献

アンリ=トロワイヤ『ドストエフスキー伝』

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