岡崎京子『Pink』解説あらすじ

岡崎京子

始めに

始めに

今日は岡崎京子『Pink』についてレビューを書いていきます。

スタイル、演出、背景知識

ヌーヴェルバーグ(ゴダール)的な実験手法、青春残酷物語

 岡崎京子といえば、映画におけるヌーヴェルバーグの影響を受けた前衛的な手法で知られます。特に影響が顕著なのがジャンリュック=ゴダール監督で、『気狂いピエロ』『勝手にしやがれ』のような青春残酷物語は岡崎京子の特徴(『リバーズ=エッジ』『ヘルタースケルター』)になっています。本作品も同様に、グランギニョルな青春を描いています。北野武監督『あの夏、いちばん静かな海』のような儚い青春の悲劇が描かれます。

アウトサイダーアート(村上龍)

 本作に登場する鰐のモチーフは村上龍『コインロッカー=ベイビーズ』を連想させます。龍の作品においても、ペットして鰐を飼っているキャラクターが出てきますが、本作においてもワニが重要なモチーフとして登場します。村上龍はセリーヌ(『夜の果てへの旅』)や中上健次(『千年の愉楽』)などの影響が強く、シュルレアリズムの系譜を色濃く継ぐアウトサイダーアートとしての性質が顕著です。

 岡崎京子も同様で、ヌーヴェルバーグという反ブルジョワ的、反俗的なジャンルに影響されつつ、消費社会の非情な構造に押し潰される個人の悲劇を描いています。

物語世界

あらすじ

 主人公のユミは一人暮らしのOL。父とは疎遠で継母とも不仲です。ユミは実母の爪の色を思い出させてくれるピンク色のバラが好きです。またペットのワニをとても大事にしており世話をするため、夜は売春で賃金を得ています。

 ユミは継母の愛人で大学生のハルヲと付き合い始め、ユミとワニにハルヲとケイコ(義理の妹)を加えた3人と1匹の間で、ささやかな幸福な生活を送ります。しかしそれを知った継母の差し金によりワニが誘拐され、継母から大事にしていたワニの皮でできたバッグが送りつけられます。しかしハルヲが小説で文学賞を受賞したことを喜び南の島への旅行に夢を馳せ、立ち直ろうとします。日本を旅立つ日、ハルヲは交通事故で死んでしまいます。ユミはそれも知らず、空港で彼を来るのをただ一人、ワニのバッグを持って待ちます。

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