伊東岳彦原作『ゼーガペイン』解説あらすじ

あ行のアニメクリエイター

始めに

 今日は『ゼーガペイン』についてレビューを書いていきます。途轍もない名作というほどでもないけど雰囲気アニメというか、隠れた佳作です。

背景知識、ジャンル

電脳世界SF,ループSF

 本作品は東洋思想の「空」であったり輪廻転生だったりをモチーフにしており、その点カルフォルニアニューエイジに影響された『マトリックス』シリーズ(1.2.3)からの影響が顕著です。

 全体的な内容としてはガルズオルムと呼ばれる組織のナーガという男が人類の進化を企てウィルスの散布により全世界の人間のデータ化(幻体)を成し遂げ、それに対抗するセレブラントの主人公キョウらの戦いが描かれます。

 タイトルは「これわが痛み」の意味で、主人公キョウが意識する、痛みを経由した生の感覚のことです。自分が幻体にすぎないとしても、自分は苦痛を感じる主体であるから、それが自由をもたらしているというテーマは伊藤計劃『ハーモニー』に通じます。苦悩の主体であることを捨て神のような超越的存在の一部となることを拒み、懸命に生の主体たらんと自由のため奮闘する主人公たちの闘いが見どころです。

ジュブナイルSFとして

 本作は全体的にはベタなサイバーパンクSFの世界観に見えますが、それでもこの作品がコアな人気があるのは全体的に演出が繊細で丁寧であるからです。『マトリックス』シリーズ(1.2.3)もある程度はそうで、ベタな世界観ながらも演出の圧倒的な完成度で見せてくれる作品ですが、本作もジュヴナイルSFとしてきめ細やかな演出が見どころです。

 『新世紀エヴァンゲリオン』(TVアニメ版)と比べても全体的に演出が丁寧で儚く、よく設定上の類似性を指摘される『十三機兵防衛圏』などと同様に、リリカルで美しい青春残酷物語になっています。

フィクション世界

あらすじ

 舞浜市に住む高校生のキョウは、自分が中学時代に起こした暴力事件が原因で廃部寸前となった水泳部を立て直そうと必死になっていました。そんなある日、ミステリアスな雰囲気のシズノ先輩と出会うい、生徒会長のシマが司令を務める戦艦「オケアノス」へと召喚され、人型兵器「ゼーガペイン・アルティール」に乗り、「ガルズオルム」と呼ばれる敵と戦うこととなります。キョウはゼーガペインの存在する無人の都市群を、ゲーム内の架空世界だと最初は考えます。

 しかしゲームだと思っていた荒廃した世界こそが現実で、キョウが高校生活を送る舞浜市のほうが量子コンピューターサーバー内で処理されている仮想空間であることを知ります。生物としての人類は既に滅亡しており、自分も「幻体」と呼ばれる人格記憶体であり、コンピューターに保存されたデータでしかないのです。

 かつてナーガという科学者が量子コンピューターを実用化します。やがて彼がCEOを務めるI.A.L社は軍事分野などにも手を伸ばし巨大コングロマリットへと成長。そして間もなく、致死率98%の「オルム・ウィルス」が世界中に蔓延します。人類は死を回避するため、世界各地に作られた量子サーバーの中で、人間の記憶や思考・人格・肉体の特徴などをデータ化した「幻体」となって生きることを余儀なくされます。疑心暗鬼に陥った人々は世界各地で戦争を始め、世界人口はわずか数年で激減し、ついにサーバー内の幻体だけが残されました。

 しかし、それらはすべてナーガによって仕組まれたものでした。ナーガはかねてより時間の加速した量子サーバー内で人間を進化させる「無限進化」を提唱しており、それを実現するためにウィルスを使って人類を追い詰めました。その後ナーガはガルズオルムを組織し、I.A.L.社のロボットを使い、環境実験空間「デフテラ領域」を世界中に作り始めます。しかしループを観測しサーバーコントロールから離れた存在「セレブラント」達は対抗組織「セレブラム」を設立。彼らはシマが開発した「ゼーガペイン」を始めとする光装甲を纏った「ホロニックアーマー」に乗り、荒廃した現実世界でガルズオルムと戦い続けていました。

関連作品、関連おすすめ作品

・『DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー』シリーズ(1.2):『マトリックス』(1.2.3)の影響を感じさせるサイバーパンクSF。

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