はじめに
よしながふみ『西洋骨董洋菓子店』解説あらすじを書いていきます。
演出、背景知識
吉田秋生の影響
よしながふみは広く漫画好きですが、よく吉田秋生との類似が指摘され、実際影響されています。
吉田秋生は『桜の園』に関する記事でも書きましたが、大友克洋流のリアリズムからの影響が顕著です。またニューシネマやその系譜を継ぐリアリズムベースのヤングアダルト映画の影響が顕著です。繊細なタッチで描かれるドラマは、ハリウッドのニューシネマ(『真夜中のカーボーイ』『スケアクロウ』など)やその流れを汲むヤングアダルト映画(『愛と青春の旅立ち』など)、またスタニスラフスキーメソッドのリアリズム映画、演劇にも似て、心理描写に秀でています。
よしながふみの端正な描写や心理の展開は吉田秋生の影響を感じさせます。
吉田秋生より秀でるところ
吉田秋生は『BANANA FISH』に関する記事でも書いたのですが、ストーリーを組み立てるのは得意ではありません。「これをやりたい、あれをやりたい」みたいなのがたくさんあって、長編になるとそれを全部やってるうちに描写に一貫性がなくなったり、ストーリーが支離滅裂になりやすい印象があり、『BANANA FISH』とか、とくにそれがひどいです。
一方でよしながふみは、とにかくストーリーを組み立てるのがうまいです。本作も連作短編で、山田風太郎『明治断頭台』、松井優征『魔人探偵脳噛ネウロ』『暗殺教室』などのような感じで、各エピソードはそれぞれ完結しつつも、それをつらぬく一本のプロットがあって、クライマックスへ繋がります。
グルメ漫画
よしながふみは『美味しんぼ』が好きなのですが、本作も同様のグルメ漫画になっています。スイーツにまつわる心理劇が展開されていきます。
『美味しんぼ』も各エピソードが完結しつつ、長編としてのドラマが展開されていきますが、本作も橘の心的外傷を巡るドラマが描かれていきます。
心的外傷のドラマ
本作は心的外傷を巡る物語になっています。このあたりは『BANANA FISH』などと重なります。
さまざまな出会いの中で自分と向き合っていく橘の成長が見どころです。
物語世界
あらすじ
橘圭一郎は会社を辞め、洋菓子店を開きます。そこで父親が橘のために選び抜いたベテランパティシエの小野裕介は、偶然にも高校時代の同級生のゲイであり、告白されて暴言を吐いてしまった相手でした。
そこに元ボクサーで超甘党の神田エイジ、橘の幼馴染である小早川千影も加わります。
参考文献
・『仕事でも、仕事じゃなくても』
コメント