高橋ヒロシ『ワースト』解説あらすじ

高橋ヒロシ

はじめに

高橋ヒロシ『ワースト』解説あらすじを書いていきます。

演出、背景知識

スタイル、背景知識

ギャグ漫画からキャプラ流のコメディへ。そしてルビッチ、エドワード=ヤンのような群像劇へ

 『ワースト』はチャンピオンを代表する不良漫画ですが、高橋作品の方向性が定まるのは『クローズ』の黒焚連合結成、県南勢登場あたり(単行本7〜11巻)です。最初期は主人公の坊屋春道の冗談のような強さをネタにする『ワンパンマン』とも近いドタバタコメディでした。『今日から俺は!!』『カメレオン』『ビー・バップ・ハイスクール』など、コメディ寄りの不良漫画は結構ありますが、その中で抜きん出た面白さがあるわけではないです。コメディからシリアスへと転換する松井優征『魔人探偵脳噛ネウロ』のように、コメディとしても振り切れた魅力があったのではないのです。そして武装戦線登場あたりから、春道という主人公に感化されて敵の不良たちが自己物語を洗練、自己肯定感を安定させ自分を取り戻すというフランク=キャプラのスクリューボールコメディ的なドラマが展開されるようになります。

 さらなる転換が図られるのが黒焚連合結成あたりからで、この頃からさまざまなキャラクターに縦横に焦点化をはかる群像劇としての語り口が確立し、これが『ワースト』に至るまでずっと続きます。『クローズ』の春道にしても、『ワースト』の主人公・花にしても、あくまでも焦点化が図られる一人に過ぎません。さながらエルンスト=ルビッチ監督やエドワード=ヤン監督のコメディのような、独特のリズムを持った群像劇が展開されます。

超越主義のアメリカ流ピカレスクロマン

 本作に登場するヤンキーたちは、マーク=トウェインの文学作品のように、正義感の強い不良ばかりです。悪人らしい悪人も、久能兄のような例外がいるだけで、それぞれみんな熱い野心と信念を持っています。高橋ヒロシ作品を特徴づけるのは、そんなヤンキーが繰り広げる多幸感に満ちた喧嘩と成長譚の中にあります。

 ZEROシリーズ(1.2)はややこの辺りのテイストが違っています。どちらかというと『QP』に近い悲壮なテイストです。

『クローズ』との違い

 本作は『クローズ』の続編的な立ち位置ではありますが、主人公の造形が異なっています。

 『クローズ』の主人公の春道は群れを好まない一匹狼で、本作におけるグリコのような立ち位置で、かつ最強に近い立ち位置でした。一方で本作の主人公の花は、喧嘩は作中上位ではあるものの最強ではなく、また人の上に立つ番長を目指すリーダータイプです。前作のブルに近いキャラクターと言えます。

 一方で、主人公は人格的にすでに完成されていて、作中でもあまり喧嘩も性格も成長しないというのは共通しています。

物語世界

あらすじ

 前作終了より約1年後。

 前作のメインキャラクターより4歳下の世代を軸に不良高校生たちの抗争を描きます。黒焚連合は消滅し、その勢力圏だった地区に竜胆高校が新設、鳳仙学園では月光兄弟が勢力を伸ばしています。

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