始めに
始めに
先日、『HUNTER×HUNTER』の連載が再開して、注目を集めています。この作品のどこが魅力なのか、レビューを書いていきます。
スタイル、語り口、ジャンル、背景知識
画風
伊藤潤二作品のような、端正な線のデッサンが特徴です。コマ割りも洗練されていて、たとえば『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ(1.2.3.4.5.6.7.8)の五部までがコマに視覚的情報が詰まりすぎていて分かりにくいのに対して、視覚的情報の提示は的確でコンパクトです。けれどもモノローグを多用するため、キャッチアップするのは大変です。
ジャンル
伝奇に該当する内容で、『幽遊白書』などとその点では共通です。無国籍的な舞台設定で、ハンターである主人公たちの活躍が描かれます。アルジャノン=ブラックウッドに代表される、モンスターの特性をとらえてそれに対処するオカルト探偵ものの影響が強いでしょうか。
制度、ゲームメカニクスのなかでの戦略的コミュニケーションの機知
この作品の最大の魅力は、なんといいましても制度、ゲームメカニクスの中での戦略的コミュニケーションの機知で、他の追随を許しません。それは例えばドストエフスキー『罪と罰』、J=オースティン『高慢と偏見』、H=ジェイムズ『鳩の翼』、谷崎潤一郎『卍』のように、慣習や法などもろもろの制度の中での戦略的コミュニケーション、心理的描写が卓越しています。
冨樫は『幽遊白書』の仙水編からこうしたスタイルを確立した印象です。
とくにキメラアント編では、戦略的コミュニケーションの累積としての集合的コミュニケーションの描写が圧巻です。
物語世界
あらすじ
・ハンター試験:主人公・ゴン=フリークスやキルア=ゾルディック、クラピカがハンター試験に合格するまで。
・念能力習得:ゴン、キルアが念能力を習得し、ハンターの基礎を身に着ける。この辺りから能力バトルの競技としてのデザインが固まります。ジョジョ三部以降の影響が顕著です。
・ヨークシン編:クラピカとその家族の仇である幻影旅団との戦いを中心にするエピソード。設定的にもジョジョ五部を連想します。
・グリードアイランド編:ゴンが父であるジンを追って、ジンがデザインしたゲームを攻略する話。能力バトルの元祖たるスポーツものの伝奇アクション(梶原一騎[『あしたのジョー』]、遠崎史朗)に先祖返りするかのようなドッジボールのシーンが印象的です。ジョジョ四部に似て、爆弾魔との戦いを描きます。
・キメラアント編:暗黒大陸からきたキメラアントとの戦いの章。『寄生獣』『ヒカルの碁』からの影響が顕著です。
・会長選挙:新たなハンター協会の会長の選挙の章
・暗黒大陸、王位継承戦:暗黒大陸へ向かう船の中での章
世界観
・念能力:人間が内に持つオーラを扱い力とする能力。能力者によって身体能力強化などの強化系、物体の性質変化などの変化系、物の実体化などの具現化系、対象を操るなどの操作系、オーラ発射などの放出系、特別な特質系があります。ゲームメカニクスの影響が顕著で、それぞれの系統にそれぞれのバリアブルアクション、パラメーターの偏り、戦略的強みがあります。
たとえば『ドラゴンボール』シリーズのように、キャラクターのパラメーターがストーリーの展開とともにインフレしていってしまう現象があまり見られないくらい、念能力の設定は作りこまれています。
総評
制度、ゲームメカニクスのなかでの戦略が圧巻!
とにかく心理戦の描写が圧巻です。戦略的コミュニケーションの描写が好きな人は必見です。
関連作品、関連おすすめ作品
・ひぐちアサ『おおきく振りかぶって』、三津田信三『首無しの如き祟るもの』、葦原大介『ワールドトリガー』、福本伸行『銀と金』:制度、ゲームメカニクスのなかでの戦略的コミュニケーションの機知
・岩明均『寄生獣』:戦略的コミュニケーションのなかで起こる、相手のパーソナリティへの信頼。倫理的規範のなかでの実践へのメタ倫理学的視座。
参考文献
風間賢二『ホラー小説大全[増補版]』(角川書店)
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