荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険 第四部』解説あらすじ

荒木飛呂彦

始めに

始めに

荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険 第四部』についてレビューを書いていきます。

 

スタイル、背景知識

年代記

 シリーズを特徴付けるのは、年代記としてのデザインです。

 年代記としてのデザインはスタインべック『エデンの東』の影響が知られ、さながらゾラ(『居酒屋』『ナナ』)のルーゴン・マッカール叢書のように、特定の血族の変遷を追いかけていきます。

 主人公となるのはジョースター家の血を引き継ぐキャラクターたちで、それがディオの系譜を継ぐキャラクターと死闘を繰り広げます。

伝奇アクション、スタンド(召喚魔術)

 また、ジョジョというシリーズを特徴づけるのは、三部から登場する幽波紋(スタンド)です。これは守護霊のような存在で、これを召喚、使役し戦うのがこのシリーズの特徴になっています。山田風太郎『魔界転生』、横山光輝『バビル二世』と並んで、バトル漫画に召喚というバリエーションを決定的な存在とした作品です。

日常に潜むサイコホラー

 本作はサイコホラーとなっています。メインの敵キャラクターとなる吉良吉影もブレット=イーストン=エリス『アメリカン=サイコ』を思わせる雰囲気です。『アメリカン=サイコ』は一種の分身譚で、公共圏の中で期待される役割に応え社会生活に順応しつつ、一方で法やモラルの観点から許されざる殺人の快楽に酔いしれる主人公が描かれます。『アメリカン=サイコ』は精神分析やマルクス主義哲学の影響を踏まえ、都市生活における「疎外」を描いた作品です。

 本作品の吉良吉影も、普段はサラリーマンとして揉め事を起こさないように振る舞いつつ、裏では手の綺麗な女性を殺して周り、その手首を手に入れています。

スタンドバトルのバランスの良さ

 本作の人気の秘訣はやはりそのスタンドバトルのバランスの良さでしょう。

 シリーズ(1.2.3.4.5.6.7.8)三部から始まった、召喚魔術によるバトルですが、本作は所与のスタンド能力やモチーフからその戦術が膨らませられており、競技としてのバランスがいいです。一方評判の悪い第六部では、いきなり『NARUTO』の幻術のようなホワイトスネイクの能力で夢オチのオンパレードになり、なんでもありになってしまっています。例えていうなら読者はお題Aから展開される機知のあるアンサーを期待しているのに、お題Aを全然無視して滑り倒しているような印象です。

 本作はスタンドのデザイン、バトルの戦略性の機知のバランスに秀でていて、どのバトルも粒揃いです。

物語世界

あらすじ

  空条承太郎がDIOを撃破した後の1999年。海洋冒険家の承太郎は祖父のジョセフ=ジョースターの遺産分配について調査したところ、隠し子である高校生の東方仗助が杜王町にいると知ります。承太郎から父のことと、町にいる邪悪なスタンド使いに関して聞いた仗助は、母方の祖父の意思を受け継ぎ、戦おうとします。

 仗助と承太郎はスタンド能力を覚醒させる「弓と矢」を回収しようとし、成功するものの杜王町には覚醒したスタンド使いが残っています。また仗助はジョセフと対面し、絆を深めます。

 広瀬康一と漫画家・岸辺露伴は幽霊の杉本鈴美と出会い、彼女を殺した殺人鬼が今も杜王町にいることを知ります。その後仗助達の知人でスタンド能力者の矢安宮重清が殺人鬼に殺され、殺人鬼もスタンド使いと判明します。調査により仗助たちは殺人鬼が吉良吉影という人物だと知り、追い詰めます。しかし吉良は他人のスタンドにより、自分の顔を川尻浩作という男の顔と入れ替え、彼に成り済まします。

 しかし父の変化を怪しんだ小学生・川尻早人は父に成り代わった吉良の殺人を目撃、同時に本物の父は殺されて今の父は偽者だと知ります。やがて早人により正体を暴かれた吉良は仗助らと対決するものの、最後は救助に来た救急車に轢かれて死亡します。

総評

シリーズ最高峰の傑作

3,4,5部はシリーズ(1.2.3.4.5.6.7.8)の中で最も作家として充実していた時期の作品で、本作も名作です。おすすめ。

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参考文献

・風間賢ニ『ホラー小説大全[増補版]

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