荒川弘『鋼の錬金術師』解説あらすじ

あ行の漫画作者

始めに

始めに

今日は『鋼の錬金術師』についてレビューを書いていきます。

スタイル、背景知識

公共的徳を獲得し、自己物語を洗練させる物語。ギリシア政治哲学、ヘルメス思想、ラブクラフト

 本作は「等価交換」と「一は全、前は一」がテーマです。等価交換は錬金術にある発想というよりも法学上の概念ですが、「一は全、全は一」というヘルメス思想は、錬金術の根底にあるものです。本作において、これは倫理的な意味合いをも秘めています。

 本作における倫理的な「真理」というのは、普遍的な正義というよりも、個人が公共圏へのコミットメントで自己物語を洗練させるプロセスの中で、主観的・客観的な解釈・評価に照らしてその効用に照らして道具的に評価できる姿勢を言っている感じです。それゆえエドワードにとっての答えと、マスタング大佐にとっての答えは違っているわけです、真理の扉のデザインも人それぞれです。そして「真理の扉」の向こうの「真理世界」に本人にとっての人生のアンサーがあるとも限らないわけです。

「真理の扉」の設定はラブクラフトのコズミックホラーを思わせますが、クトゥルフ要素は抑えめです。

七つの大罪

 本作の敵の幹部は7つの大罪をモチーフにしています。けれどもそうした人間の業でもある、人間の価値的実践の前提となる欲求に対して、グリードの改心のエピソードなどを通じて積極的な価値づけをも与えています。その点で伊藤計劃『ハーモニー』、岩明『寄生獣』とも重なります。

マクロな政治的アクターの織りなす架空戦記

 本作品はマクロな政治的アクターの織りなす架空戦記SFとしての性質を抱えています。諫山『進撃の巨人』なんかと近いですが、マクロな政治的動乱の裏に潜む意図や世界観の謎をめぐるサスペンス、ミステリー要素が見どころです。太極的な動乱の中でミクロなアクターの選好や信念の変化により協調が図られていくリベラリズム的世界観が見どころです。

 とはいえ、『進撃の巨人』の方が世界観はかっちり作ってる印象です。それとテーマが相互理解とかなのに、戦争の背後に実は当事者以外の黒幕的勢力がいて、みたいな形で国際的協調が果たされていくというのは、このテーマの回収の仕方としては安直な気持ちがします。

プロットの因果的連なりの巧みなデザイン

 本作は長期連載漫画によくある矛盾やグダグダもなく、プロットの因果的連なりが巧みにシャープにデザインされています。またパワーインフレもなく、バトル要素もアイディアや戦略性などにおいて一定のクオリティです。

 一方で世界観とかは結構コテコテでいい加減で、重厚な味わいに欠けています。またジョジョシリーズ(1.2.3.4.5.6.7.8)や『HUNTER×HUNTER』と比べると、バトルの戦略性やアクションの機知にはやや劣る印象もあり、あと錬金術というギミックがそもそもバトル漫画としてはあまり面白くはないです。

物語世界

あらすじ

金術師エドワードと鎧の体の弟アルフォンスの兄弟は、死んだ母親を生き返らせようと、人体錬成という禁忌を犯します。それによってエルリックは片手と片足、アルフォンスは肉体を失いました。肉体を取り戻すため、賢者の石を探す二人でしたが…

総評

ビルドゥクスロマンの佳作

プロットはよく練られ、主人公の成長が描かれます。ただ世界観とか適当なところも多いです。それでも全体的に高水準な内容です。

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参考文献

佐久間康男ほか『概説 イギリス文化史』(ミネルヴァ書房.2002)

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