楳図かずお『14歳』解説あらすじ

1990年代

始めに

楳図かずお『14歳』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、作風

ポストアポカリプス

 本作はアポカリプスもの、ポストアポカリプスものジャンルです。大規模な戦争、自然災害、疫病、異星人、機械生命体などにより、文明や人類が死に絶えるまでを描くものをアポカリプスもの、ほとんど死に絶えた後の世界を描くものをポスト=アポカリプスものと言います。

 本作は、人類の滅亡までと、最後の希望となった子供たちの活躍を描く内容です。

 こうした点では『漂流教室』と同様です。

タイトルの意味とは

 タイトルの14歳とは、人類滅亡のタイムリミットを意味します。22世紀、人類は繁栄の陰で破滅の危機に直面し、ある時鶏肉製造工場の培養槽から、鳥の頭をもつ異形の生物、のちの「チキン=ジョージ」が生まれます。誕生後、チキン=ジョージはあらゆる学問を独学で習得し、その年生まれた子供が14歳になった段階で人類と地球が滅ぶと知ります。

 これがタイトルになっている14歳の意味で、滅びまでのタイムリミットを意味します。

チキン=ジョージ

 先にも述べたように、鶏肉製造工場の培養槽から、鳥の頭をもつ異形の生物が「チキン=ジョージ」です。

 チキン=ジョージは滅亡の預言を知り、人類による地球の滅亡から逃れようと、動物たちを連れて地球脱出ロケット「チラノサウルス号」を建造します。しかしチキン=ジョージは、大富豪ローズ氏とアメリカ副大統領マーサ=ゴーマンの手先である美女バーバラの魅力に負け、地球に残ることにして、自ら大脳の左右を分離して退化の道を選びます。終盤に子供たちは、代替ロケット「チラノサウルス号」に乗って地球を脱出するものの、宇宙船を乗っ取られたチキン=ジョージの怨念が彼らを苦しめます。

 このようにチキン=ジョージは未来の希望としての子供たちのアンチテーゼ的な存在で、理想のために邁進していたものの現実や誘惑に直面して挫折した大人の象徴のようなキャラクターです。

 こどもたちは、最後にこの宇宙の外にチキンジョージらの住む世界があるのを知り、彼らの助けを得て、人類と宇宙が救われます。ここでチキン=ジョージはまた、異なる文化の象徴でもあります。

 チキン=ジョージという大人の遺志を継ぎ、またチキン=ジョージという他者と心を通じ合わせ、子供たちは宇宙と人類を救い、新たな時代を築いていこうとします。

物語世界

あらすじ

 22世紀、人類は繁栄の陰で破滅の危機に直面します。そんな中、鶏肉製造工場の培養槽から、鳥の頭をもつ異形の生物、のちの「チキン=ジョージ」が生まれます。誕生後、チキン=ジョージはあらゆる学問を独学で習得し、その年生まれた子供が14歳になった段階で人類と地球が滅ぶと知ります。

 そこで人類による地球の滅亡から逃れようと、動物たちを連れて地球脱出ロケット「チラノサウルス号」を建造します。しかしチキン=ジョージは、大富豪ローズ氏とアメリカ副大統領マーサ=ゴーマンの手先である美女バーバラの魅力に負け、地球に残ることにして、自ら大脳の左右を分離して退化の道を選びます。

 やがて、人類と同じ滅亡の危機を迎える宇宙人たちがやってきて、遺伝子交換による生き残りの望みを賭け、人類を集団レイプします。しかし宇宙人たちは地球人の遺伝子には未来が無い事を悟り、地球の霊的エネルギーを奪ってさります。

 これにより地球のバランスが狂った事により、大災害が発生して人口は激減します。各国政府が極秘裏に進めていた、選ばれた子供たちによる地球脱出計画は、暴徒化した市民により瓦解します。やがて人類は死亡した後はその本性を現すようになり、本性を現した人間は怪物へ変化します。

 子供たちは、代替ロケット「チラノサウルス号」に乗って地球を脱出するものの、迫りくる14歳のタイムリミットと、宇宙船を乗っ取られたチキン=ジョージの怨念に悩みます。破滅は地球に止まらず、目的地であったアンドロメダ星雲にも及んでいます。

 14歳になり、恐竜チラノサウルスに先祖がえりしだした同胞と荒廃した宇宙を目にした子どもたちは、チラノサウルス号の氷河期を再現した空間に入り14歳に近い者から冬眠します。

 そんななか子供たちの代表で誕生日が一番遅かったアメリカ少年は、チラノサウルス号から光に包まれた宇宙の果てを見ます。そしてそのアメリカ少年は宇宙に飛び出します。すると今までの宇宙は1匹の芋虫のなかに存在しており、芋虫が瀕死になったために、宇宙の荒廃が進んだことを知ります。

 そして宇宙の外の世界では、チキン=ジョージと同じ容姿の者たちが人間のように生活していました。宇宙としてのアオムシを木の葉生い茂る場所へ移そうとするアメリカ少年ですが、アオムシの宇宙の住人であるアメリカにはアオムシを持ち上げられません。
 そこへ自動車で通りかかる親娘連れは、チキンジョージの姿でした。彼らにアメリカ少年は見えず、アメリカも彼らに触れられません。
 心優しいその娘はアオムシをつまみあげ、森の中へ帰します。
 アオムシが元気を取り戻し、 アメリカはチキンジョージ顔の少女たちと会話をかわし、人類は新たなステージへと進化します。
 この一連の出来事が人類の終焉を回避させます。
 冷凍睡眠装置から次々と子供たちは起き出し、アメリカたちは少女に礼を言い、自分たちの世界=アオムシの小宇宙へと帰るのでした。

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