始めに
藤子・F・不二雄『ノスタル爺』あらすじ解説を書いていきます。
背景知識、作風
タイムトラベルSFと、横井庄一
本作は、タイムトラベルSFで、それを横井庄一のエピソードと絡めています。
横井庄一は太平洋戦争終結から28年目、アメリカ領グアム島で地元の猟師に発見された残留日本兵です。その後愛知県の実家に帰るものの、すでに母は故人でした。1972年8月に見合いをした幡新美保子と同年11月に結婚し、またその数奇な人生も相まって、帰国後は講演依頼などが多くあり、著作も広く知られます。
本作の主人公の浦島太吉も、昭和20年の終戦を知らず、孤島のジャングルに残っていた元日本兵でした。30年ぶりに帰国した太吉は、故郷の立宮(たつみや)村がダムの底に沈んだこと、自身の出征直前に結婚した里子が、夫が戦死したと思ったまま孤独に亡くなったことを知らされて後悔し、故郷の跡地を彷徨っていたところ、タイムトラベルに巻き込まれ、自分が少年だったころの故郷に戻る、という内容です。
タイトル
タイトルのノスタル爺とは、太吉の実家の土蔵にいた謎の老人のことで、かれは太吉と里子のことに何か思い入れがあるようでした。実はその正体は、タイムトラベルしてやってきた未来の太吉自身で、故郷や帰るべき場所を失い彷徨っていた太吉は過去の故郷に戻ってきて、土蔵に閉じ込められて、里子と過去の自分の様子を眺めながら、余生を過ごすことを選んでいたのでした。
ノスタル爺が「抱けえ」と叫ぶ場面は有名ですが、作中でも印象的な場面で、結局里子一人にしてしまい、不幸のなかで死なせてしまった後悔から、太吉は過去の自分に思いの丈をぶつけていたのでした。
物語世界
あらすじ
主人公の浦島太吉は、昭和20年の終戦を知らず、孤島のジャングルに残っていた元日本兵でした。30年ぶりに帰国した太吉は、故郷の立宮(たつみや)村がダムの底に沈んだこと、自身の出征直前に結婚した里子が、夫戦死の誤報を受け、再婚せずに亡くなったと知り、後悔します。
両親と里子の墓参りをした太吉は、里子と結婚したことを負い目に感じて悔みながら、村が沈むダムを眺め、若い頃の里子とのことを回想します。
すると太吉の目の前に、幼少期時代のそのままの村が広がっています。太吉は村に駆けこみ、そこに通りかかった幼子時代の里子に、思わずすがって泣き崩れた太吉は、余所者として警官に捕まり、名乗ったことで浦島の家に連れて行かれます。浦島の当主で太吉の父は、彼の話を信じませんが、顔付きなどから縁者であることに間違いはないと確信し、金を渡して、村から出ることを言い渡します。しかし太吉は土蔵に閉じ込められても構わないから、村にとどめてほしいと懇願します。
太吉は「気ぶり」として、浦島の家の土蔵に閉じ込められます。土蔵の前では、幼い太吉と里子が遊び、土蔵の中でそれに対して、太吉は満たされた表情を浮かべます。
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