始めに
永井豪『デビルマン』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、作風
メディアミックス
本作は永井豪が自作品『魔王ダンテ』をベースに悪魔をヒーローとした作品として基本設定を行ったものです。メディアミックスを前提としてつくられていて、漫画版、アニメ版でプロットが異なり、設定が重なるだけでほとんど別の作品です。
魔王ダンテ
原型になった『魔王ダンテ』の設定なのですが、途中で主人公が悪魔の事実を知らされます。古代、恐竜の生息する地球で平和に繁栄していた先住人類の街ソドムに、宇宙から「神」と名乗る不定形エネルギー生命体が飛来し、自分たちの入れ物としての人間の肉体を要求したものの、それを断った先住人類に対し、「神」は分身である牛頭馬頭などにあらゆる地獄を発生させて人類を殺戮しようとしました。科学者ダンテは飛行兵器で神に挑もうとするものの、「神」の分身や翼竜、ティラノサウルスに襲われ、それでも「神」を倒すまでは死ねないという怒りが、兵器、「神」、翼竜、ティラノサウルスなどと合体し巨大な悪魔「ダンテ」が誕生します。そして同様の合体が次々と起こり、悪魔が生まれます。神はゴモラを洪水で滅ぼし、世界各地に棲息していた類人猿に分散寄生し、それを現在の人類として進化させ、「神」の敵として「悪魔」を殺し続けてきた、というのでした。
このように、『魔王ダンテ』では、神と悪魔が神話と逆転していて、神の側が侵略者で、悪魔こそ本来の人類であり、神への反逆は侵略者への抵抗です。また、現生人類は神が寄生したもので、悪の側にあります。
そうした設定を『デビルマン』も踏まえています。
悪魔と人間の逆転
『魔王ダンテ』が神と悪魔の倒錯を描いたものとするなら、『デビルマン』は、悪魔と人間の倒錯を描いたものと言えます。
本作の終盤は有名ですが、ヒロインの美樹が暴走した人間たちに殺され、主人公で悪魔と合体したデビルマンの不動明は、人間たちこそが悪魔そのものであると悟ります。
一方で、神と悪魔の対立という『魔王ダンテ』のテーマは、かなりサブ的な設定になっていて、過去にあった悪魔と神の対立はかなり詳細を省かれています。とはいえ、悪魔がもともとは神に追われた古い人類のような存在で、現生人類と対立するというのは共通です。『デビルマン』における神は侵略者ではなく神話のごとき創造主で、その支配に抗おうとしたのが悪魔で、戦争の中で神を裏切ったサタンがデーモン側について戦って勝ち、次の神との戦いのために永い眠りにつき、目覚めたときに人類が地球を荒らしていたので許せずに滅ぼそうとした、というのが作品の背景になっています。
ゲーテ『ファウスト』
ゲーテ『ファウスト』がダンテ『神曲』を下敷きにしているというのがあって、本作のプロットは『神曲』と『ファウスト』を踏まえるものです。
地獄の如き世界が描かれるのもそうですが、途中で描かれる起源神話めいた異世界冒険譚のパートは、ゲーテ『ファウスト』の第二章の影響をつよくうかがわせます。
物語世界
あらすじ
197X年。不動明は居候先の牧村家の娘美樹と仲良く学校に通う少年です。ある日、親友の飛鳥了から、他の生物との合体能力を持った地球の先住人類「デーモン(悪魔)」が200万年の眠りから目覚めて地球を人類から奪い返そうとしていることと、デーモンの研究をしていた了の父がデーモンと合体して自殺したことを知らされ、デーモンと合体することでデーモンと戦う話を持ちかけられます。
しかし、それには理性を捨て本能で動いている時に憑依させ、デーモンの意思を正義の心で抑え込む必要があります。デーモンに襲われた恐怖で理性を失った明は、デーモンであるアモンに憑依され、悪魔の体と人間の心を持つデビルマンとなります。
デーモンたちは、デビルマンとなった明に刺客を送ってくるものの、明はそれを倒します。やがてデーモンは人類に宣戦布告し、総攻撃を仕掛けてきます。デーモンによる無差別合体という自爆攻撃に人類がパニックとなる中、明は了の制止を振り払い、単身でデーモンとの戦いに赴くものの、力尽きます。しかしデーモンの神である大魔神サタンの「デビルマンを殺すな」という意思がデーモンに伝えられ、明は解放されます。
明は、無差別合体でデビルマン化した者たちを集めて、デビルマン軍団を組織しようとします。しかし「悪魔の正体は現代生活に不満を持つ人間である」と高名な科学者が発表し、悪魔狩りの名の下、罪のない人々が政府に殺戮されます。
一方、自分の懸念通りに事が進みすぎることに違和感を持った了は、事の発端を再確認するために自宅に戻るものの、そこで了の父がデーモンの研究をしておらず、飛鳥了なる少年はすでに交通事故で死んでいたことを知ります。混乱する中、家に侵入してきたデーモンの一人のサイコジェニーに「お迎えに参りました」と告げられます。
数日後、デーモンがもう襲ってこないことに気づきかけていた人間の恐怖を煽ろうと、了はテレビで、明がデーモンと合体した瞬間の映像を公開し、人々を扇動します。正体がばれ、牧村の家を出ることになった明は、裏切った了を問い詰めるものの、了は明とデーモンを合体させたのは、次のデーモンの時代で共に生きたかったためだと答え、明は了が大魔神サタンだと悟ります。
悪魔特捜隊による拷問で牧村夫妻は惨殺され、美樹も暴徒となった住人たちに惨殺されます。人間に絶望した明は、デビルマン軍団を率い、地上の覇権を賭け、サタンは自らの記憶を消し、人間になりきって人間の弱点をつかみ、デーモンたちを率いてしました。誤算だったのは、両性具有のサタンが明を愛した結果、デーモンの敵となるデビルマンが誕生したことでした。
20年ののち人類は滅亡し、デビルマン軍団とデーモン軍団との最終決戦アーマゲドンが始まります。
やがて戦いは終わり、横たわる明の傍でサタンは語ります。かつて地球を支配していたデーモンは創造主たる神に滅ぼされかけ、それに反発したサタンがデーモン側について戦って勝ち、次の神との戦いのために永い眠りについたこと、目覚めたときに人類が地球を荒らしていたので許せず、滅ぼそうとしたこと、しかしそれは神が行おうとした愚行と同じだったこと。
話終えたサタンは明に謝罪するものの、半身を失った明はすでに死んでいます。サタンが涙を流していたとき、「天使の軍団」がそこに迫っていました。



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