最高傑作。板垣恵介『バキ』あらすじレビュー

1990年代

始めに

板垣恵介『バキ』解説あらすじを書いていきます。

 

背景知識、作風

作家性

 板垣恵介は、池上遼一、谷口ジロー、鳥山明、おおた慶文などから絵柄において影響されていて、作風としてはやや池上遼一(雁屋哲原作『男組』など。原作者のテイストも強いと思いますが)と近いかもしれません。
 作画時にボディビルの雑誌を参考にしているそうで、本作も誇張的な肉体美が描かれ、『北斗の拳』やジョジョシリーズ(1.2.3.4.5.6.7.8)を連想します。

伝奇

 本作は伝奇色が強い格闘漫画です。

 板垣は小池一夫主催の「劇画村塾」に入塾していて、ここから伝奇的バックグラウンドを創作において形成します。

 本作も伝奇や講談本の類を思わせる、口語的でリズミカルでケレンに満ちた語り口が印象的です。

 また、梶原一騎が作った、プロレスなどのスポーツによる伝奇アクション、格闘漫画の文脈も継承していて、アクションのバロックな機知が見どころです。

物語世界

あらすじ

最凶死刑囚編:地下闘技場戦士と、シンクロニシティで脱獄した5名の死刑囚たちとの戦いを描きます。
中国大擂台賽編:中国武術界最強の「海皇」を決める大会を舞台とした物語です。烈海王が範馬刃牙の解毒治療のために中国へ連れて行き、大会に出場させます。真相は毒手を持つ敵と対戦して毒を裏返すという荒業の治療法でした。
神の子激突編:マホメド=アライJr.を中心とした物語。以前より刃牙の彼女の梢江にアピールしていたアライJr.が、範馬刃牙に勝負を挑みます。

所感

最強死刑囚編

 バキシリーズは、1作目の『グラップラー刃牙』か、本作『バキ』を最高傑作に挙げる人が多いと思います。本作の人気は、ひとえに最強死刑囚編に由来します。

 これは、地下格闘戦士たちと脱獄した死刑囚のバトルを描くエピソードなのですが、とにかくこのエピソードは、群像劇としての魅力が強いです。地下格闘戦士と死刑囚のマッチメイクがいずれも魅力的で、誰が誰と当たるのか、みたいな序盤からの流れが非常にワクワクさせられます。

 たとえていうなら『クローズ』『ワースト』などのような感じで、一人ひとりのキャラクターの魅せ方、マッチメイクの巧みさ、語り口と展開のリズミカルなテンポがすべて有機的に結びついて展開されていきます。

 ただ惜しむらくは、最凶死刑囚編は終盤に至るまでが一番面白く、序盤の後半が中盤あたりをピークに落ち着いてしまう残念さや、間をもたせるサスペンスの多さから若干テンポの悪さを感じるところが少し減点要素です。

 また最強死刑囚編以降の話はあまり面白くなくて、以降のシリーズは『グラップラー刃牙』と最強死刑囚編の盛り上がりを超えられないまま惰性で続いている感じです。カイジの沼以降みたいな感じで、序盤がめちゃくちゃ面白かったからあとは惰性で読んでる人が多いと思います。

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