松本大洋『鉄コン筋クリート』解説あらすじ

ま行の漫画作者

始めに

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今日は『鉄コン筋クリート』についてレビューを書いていきます。

 

スタイル、演出、背景知識

大友克洋流の無国籍、土田世紀流のアナクロ、ナンセンス

 本作を特徴づけるのは、なんといってもその無国籍な世界観です。大友克洋『AKIRA』の影響と思しき、アジア風味でありつつも、幻想的で無国籍な世界が特徴です。コッポラ監督『ゴッドファーザー』シリーズ(1.2.3)や、任侠映画、リドリー=スコット監督『ブレードランナー』の世界をごった煮にしたようなロケーションを自由に飛び回る二人の少年が主人公です。私淑した土田世紀を思わせるアナクロニズムが印象的です。

モダニスト望月峯太郎、高野文子

 松本大洋はその前衛的な作風、豊かな実験的語り口で知られますが、その先駆となったのは、望月峯太郎、高野文子といったモダニストたちでした。望月峯太郎はムラっ気はあるものの、市川崑のような確かな実力を持つモダニストです。一方で高野文子の方は本当に圧倒的な才能で、少女漫画の枠でも才能として並び立つのはくらもちふさこくらいのものです。例えば後続の前衛的な少女漫画家である岡崎京子(『Pink』『リバーズ=エッジ』)は漫画界のゴダールです。すなわち出来不出来はあるしアマチュア臭いけれど、なかなか侮れなくて閃きに満ちた作品も多いのです。そうするならば、高野文子は漫画界のヒッチコック、オーソン=ウェルズ(『市民ケーン』)で、文句なしに映画界の作家主義におけるレジェンドです。

 松本大洋も高野文子のカット割における実験的手法の影響を受けつつ、独特の漫画の演出を生み出しています。松本に特徴的なスタイルは、広角レンズのような効果を画面に反映させた、独特の浮遊感や質感を湛えた演出です。これが作中のアクションに独特のムードを演出してくれています。

利他的行動、憧れ、依存

 松本大洋はまた、三島由紀夫『サド侯爵夫人』や大江健三郎『取り替え子』のような、憧れや理想化、依存といった心的状態、心理的実践をテーマにする作劇が特徴で、それは『ピンポン』にも共通しています。

 本作のテーマになっていて、主人公であるクロが乗り越えるべき葛藤とはシロへの利他的行動による依存です。クロは所謂、毒親のような振る舞いをシロに対して行っており、自分の援助の対象としてシロを理想化し、支配、所有しようとしています。そこには一個の個人としてシロを尊重しようとする姿勢がなく、ただシロを都合のいい存在としてしかみなして依存するクロのエゴがあります。そんな自分の心の闇を、自分の分身たるイタチとの戦いの中で、クロは乗り越えていきます。

物語世界

あらすじ

ヤクザが蔓延る宝町。そこに住む「ネコ」と呼ばれる少年・クロとシロは、驚異的な身体能力で街の中を飛び回ることが出来ました。地上げ屋のヤクザ、3人組の殺し屋と蛇という名の男性が現れます。更に、実態不明の「子供の城」建設プロジェクトが立ち上げられる事になり、町は不穏な空気に包まれます。

総評

天才の代表作

 天才、松本大洋の代表作でスタイルとして完成されています。

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参考文献

・南信長『現代マンガの冒険者たち』

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