くらもちふさこ『おばけたんご』解説あらすじ

1990年代

はじめに

くらもちふさこ『おばけたんご』解説あらすじを書いていきます。

演出、背景知識

乙女チックまんが

 くらもちふさこは乙女チックまんがの代表格です。

 1970年代『りぼん』で陸奥A子などの乙女チックまんがという等身大の女子の世界を描くこのジャンルが定着しました。このジャンルの発展に関与したくらもちふさこの作品は、繊細でリリカルな心理描写を中心とした作風を展開します。

 やや先輩格の花の24年組の代表的少女漫画家である大島弓子などと重なる作家性です。

 また、そうした情緒的機微を演出する、洗練されたスタイルがくらもちふさこの特徴です。

心的外傷

 本作は、心的外傷からの回復と自立を描くドラマです。

 主人公、憧子(あこ)と端午は親同士が決めた許婚同士。子供の頃からそうして仲良く遊んでいたある夏休み、憧子の親の病院で入院している少年、陸ちゃんと出会います。退院する陸郎家族の車と端午の車が事故に遭い、陸郎の両親と端午が死んでしまいます。両親を無くした陸郎は端午の親が引き取り、陸郎と憧子は許婚になりました。

 陸郎と憧子は恋人同士になるものの、その後もずっと端午の亡霊に心が囚われていて、それがタイトルの「おばけたんご」の由縁です。

もしもの世界

 物語の最後に、過去、もしも端午が生きてたらという話が始まり、これは憧子の空想なのか、パラレルワールド的な世界なのか分かりませんが、ラストに憧子のモノローグで締められるので前者かもしれません。そこでは端午とは許婚のままで、陸ちゃんとは顔も合わせていません。しかし病院に挨拶にきた帰り、憧子は陸郎と出会います。幼い頃に病院で会った時、そして高校生になって偶然会った時。もし、端午が生きていても、いなくても、憧子は陸郎と出会ったなら陸郎に恋をしたはずでした。
 憧子は「端午が残していった一つの出会い、無駄にはしないわ。」と、物語を締めくくり、おそらくは陸郎との関係を修復することを示唆して締めくくります。

 このように、ささやかで繊細な心的外傷の克服の心理描写を、平行世界のように非日常的な特異な描写によって演出する手腕が非常にくらもちらしい部分で、その語り口の豊かさは、オーソン=ウェルズ、ヒッチコック、キアロスタミと重なります。

物語世界

あらすじ

 憧子(あこ)と端午は親同士が決めた許婚同士。子供の頃からそうして仲良く遊んでいたある夏休み、憧子の親の病院で入院している少年、陸ちゃんと出会います。退院する陸郎家族の車と端午の車が事故に遭い、陸郎の両親と端午が死んでしまいます。両親を無くした陸郎は端午の親が引き取り、陸郎と憧子は許婚になりました。

 やがて高校生になり、陸ちゃんは高校から一人暮らしを始め憧子と同じ高校へ通います。

 しかし自信の無い憧子は自分が陸ちゃんを縛り付けてるんだと思い、婚約を解消します。陸郎も憧子が端午の存在を忘れていない事に気付いていて「端午の変わりになれなかった」と去っていきます。

 それから過去、もしも端午が生きてたらという話が始まり、これは憧子の空想なのか、パラレルワールド的な世界なのか分かりませんが、ラストに憧子のモノローグで締められるので前者かもしれません。そこでは端午とは許婚のままで、陸ちゃんとは顔も合わせていません。しかし病院に挨拶にきた帰り、憧子は陸郎と出会います。幼い頃に病院で会った時、そして高校生になって偶然会った時。もし、端午が生きていても、いなくても、憧子は陸郎と出会ったなら陸郎に恋をしたはずでした。
 憧子は「端午が残していった一つの出会い、無駄にはしないわ。」と、物語を締めくくり、おそらくは陸郎との関係を修復することを示唆して締めくくります。

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