始めに
くらもちふさこ『天然コケッコー』あらすじ解説を書いていきます。
背景知識、作風
乙女チックまんが
くらもちふさこは乙女チックまんがの代表格です。
1970年代『りぼん』で陸奥A子などの乙女チックまんがという等身大の女子の世界を描くこのジャンルが定着しました。このジャンルの発展に関与したくらもちふさこの作品は、繊細でリリカルな心理描写を中心とした作風を展開します。やや先輩格の花の24年組の代表的少女漫画家である大島弓子などと重なる作家性です。
また、そうした情緒的機微を演出する、洗練されたスタイルがくらもちふさこの特徴です。
連作短編、タイトルの意味
本作は美人で田舎育ちの主人公右田そよの中学二年から高校二年までの三年間を、東京から転校してきた大沢広海との恋愛を中心に、村の豊かな自然やさまざまな人々、分校の人たち、高校での新しい人間関係などを描く連作短編です。物語らしい因果的連なりは希薄で、日常描写中心です。
そよは地元や高校のある町で有名になるほどの美人ですが、本人にはまるでその自覚はなく、優等生で人当たりもいいのに、どこか抜けている天然で、それがタイトルの意味です。
それと分校でそよたちが世話しているニワトリが、そよ自身の成長や将来の夢(分校教師)を象徴するため、そのあたりを示すタイトルになっています。
物語世界
あらすじ
山間の小さな村に、東京から大沢広海が転入します。村を愛し、誇りを持っている中学生右田そよは、初めての同級生である大沢広海に村の魅力を伝えようとします。
田舎しか知らない右田そよと、都会っ子の大沢広海は、ケンカしながらも恋人となります。
やがて2人は同じ高校に入るものの、クラスが別れます。それぞれに異性の友達が出来ますが、そよと大沢君は一途です。
しかしすれ違いがあって、そよから大沢君に付き合うの止めようと提案し、大沢君も距離を取るようになります。
やがて大学受験などのため、大沢親子が東京に帰りもう帰らないものかとも思われましたが、結局しばらく後に大沢君が戻ってきます。
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