始めに
古谷実『行け!稲中卓球部』あらすじレビューを書いていきます。
背景知識、演出
ニューウェイヴ
古谷実は望月峯太郎(『ドラゴンヘッド』)のファンで、特に『バイクメ〜ン』ファンで、古谷にも『グリーン=ヒル』というライダーの人たちを描く作品があります。
望月峯太郎は、ニューウェーブの代表的漫画家です。漫画におけるニューウェーブは、1970年代末から1980年代初頭にかけて青年漫画界に現れた、少年漫画と少女漫画、劇画の枠組みを乗り越える動向や革新的表現の潮流について言われたもので、ニューウェーブに括られる漫画家は幅広いジャンルと内容をたたえていて、代表は大友克洋です。
ジャンルとしてニューウェーブはくっきりした輪郭を持つものではなくて、同時代のジャンル越境的表現を展開する漫画家について広くニューウェーブと呼んで広くそれが定着していった感じです。望月峯太郎もそんなニューウェーブを代表する漫画家で、ホラーやラブコメ、海洋冒険ものなど幅広いジャンルを手がけつつ、ニューシネマなどに影響されたと思しきドライでオフビートでモダンなセンスに裏付けられた画風、作風を特徴としました。
同様に、古谷実の作品も、そうしたジャンル越境的なところがあって、本作も同様です。
ギャグ漫画としての独創性
本作のギャグはダウンタウン的なトーク芸とシュールギャグ、とんねるず的な素人芸が中心です。
本作がギャグ漫画として新しかったのは、ニューシネマ的な青春物語の枠でギャグ漫画を展開したことだと思います。
ギャグ漫画においては、トラブルメーカー的なキャラクターが現れるのは常で、本作の前野、井沢、田中がその中心的ポジションですが、三人とも割と常識はあって、行動は常識的ではないものの、感覚は当事によくある若者という感じで、空気も読んでいます。
三人とも、若いモラトリアムの時期にあって年齢故にゆるされる破天荒とドタバタを謳歌しているものの、将来にどこか不安や閉塞感のようなものを抱えていて、内省的なところもあります。
前野も井沢も結構傷つきやすく、スラップスティックな暴力が展開される場面は多いものの、心ない言葉には結構傷ついたりもしやすいです。
物語世界
あらすじ
稲豊市の、稲豊市立稲豊中学校、通称稲中が舞台です。
稲中の男子卓球部には6人の部員がいます。下品な主人公前野、前野の親友で矢吹丈に心酔している井沢、無口で変態の田中、ハーフでワキガの田辺のほか、まともな部長竹田、副部長木之下、顧問の教諭柴崎がいます。
やがて、マネージャーの岩下と神谷が加わります。
コメント