始めに
あさのいにお『ソラニン』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、作風
青春漫画、アングラ文脈
浅野いにおは、高校時代は、友人の影響でアングラな漫画や音楽に触れ『ガロ』などに触れています。アングラ、サブカル漫画では古屋兎丸、岡崎京子、よしもとよしともを好んでいました。
実際、キャリアの最初の頃は絵柄とかコマ割り、会話劇のスタイルもよしもとよしともそのままみたいな感じなんですが、次第に画風やスタイルの面において独特のものを形成していき、本作などは、そうした独自の演出を確立した時期の作品と言えます。
モラトリアム
岡崎京子、よしもとよしともの一部作品がそうですが、作品のなかで描かれるのは青春やモラトリアムの時期にまつわるものです。
岡崎京子はゴダール、トリュフォーなど、ヌーヴェルヴァーグというアート映画の潮流が顕著なんですが、ヌーヴェルヴァーグはシュルレアリスムからの影響が強かったのでした。シュルレアリスムは、既成のモラルやアートへのアンチテーゼとして現実の若い犯罪者、ファム=ファタールなどに着目し、そこからシュルレアリスムの内部やそのモードを継承するジャンルには、グランギニョルな青春劇、ティーンの世界を描くものが増えていき、ゴダール、トリュフォー、岡崎京子の作品もそうしたモードを共有します。
本作『ソラニン』も、二十代前半のモラトリアム的時代の世界を描いています。
物語世界
あらすじ
社会人2年目の井上芽衣子は、将来に希望を感じられずにいます。やがて勢いで会社を辞めてしまいます。
芽衣子の同棲相手で恋人の種田成男は、大学時代のバンド仲間である加藤、ビリーと定期的に会い、デザイン事務所のアルバイトの合間を縫ってバンド活動をしています。種田は自身の音楽の才能は平凡として逃げの姿勢で、芽衣子はそれに苛立ち、「バンドをやってほしい」と自分の思いをぶつけます。
種田はアルバイトを辞め、再びバンド活動に熱を入れるます。そして加藤、ビリーらに声をかけ、新曲「ソラニン」をレコーディングします。
そのデモCDを送ったレコード会社のうち1社から反応があり、種田、芽衣子、ビリーの3人は会社を訪れ冴木という人物に会います。話の内容は、これからアーティスト活動で売りに出す新人グラビアアイドルのバックバンドの依頼でした。それに黙っている種田の気持ちを代弁するように、芽衣子はその話を断ります。
以降デモCDの反応はなく、秋になります。種田は芽衣子に対し別れ話を持ち出します。その場は和解したものの、種田は散歩に行くと出ていきます。種田から連絡があったのは5日後で、彼は以前辞めたデザイン事務所でまた一度働き始めた事、そしてこれまでの思いを芽衣子に伝え、互いの思いを再確認します。しかしそこ帰り道、種田は交通事故で亡くなります。
それから2か月、芽衣子はそのトラウマに悩みます。そんな中、種田の父親が芽衣子の元を訪れ、種田の父は「彼を忘れないでやって欲しい」という事、そして「彼が居た事を証明し続けるのが、あなたの役割」と言い残します。
その言葉から、芽衣子は種田のギターを手に取ります。ビリーたちとバンドを再開させた芽衣子はギターの練習をし、ライブハウスのステージに立ち、芽衣子のボーカルで種田の残した曲「ソラニン」を歌うのでした。
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