つげ義春「噂の武士」解説あらすじ

1960年代

始めに

つげ義春「噂の武士」解説あらすじを書いていきます。

背景知識、作風

『ガロ』

 つげ義春は『ガロ』を代表する漫画です。

 『月刊漫画ガロ』は、1964年から2002年頃まで青林堂が刊行していた漫画雑誌です。内容としてはリアリズムやシュルレアリスム、マルクス主義を作品に取り入れたり、文学や絵画など既存の芸術と交錯するような形で独創的世界を展開していきました。

 つげ義春は、白戸三平、永島慎二と並び、ガロを代表する漫画家で、私小説、シュルレアリスム、象徴主義など種々の小説ジャンルを参照しつつ、独自の世界を展開していきました。

 本作も太宰治や太宰が私淑した芥川龍之介のテーマ小説のような、寓話的物語です。

テーマ小説

 明確な主題を掲げる作品をテーマ小説といい、菊池寛の「忠直卿行状記」、芥川竜之介の「」「芋粥 」などがあり、もっぱら新思潮派におけるある種の傾向をややネガティブに言及するときに用いられる概念であり、ジャンルです。

 菊池寛や芥川はバーナード=ショーの戯曲を好んでいて、そのリベラリズム的主題やメッセージに着目し、作品のテーマとしました。

 本作「噂の武士」も、芥川や菊池のそうした作品同様に、明確なテーマをコンセプトにする内容です。

本物と偽物

 本作の大まかなプロットは、温泉街で武士の平田が宮本武蔵らしき優れた武芸者と出会い、彼が武蔵だと確信するものの、じつはその正体はただ宿屋に雇われた客寄せだった、という流れです。そこから平田は、最初は男に幻滅したものの、次第に彼への共感へとこころが移り、才能があっても世に出られない武芸者のの世知辛さや人生の厳しさを悟り、それが作品の中心的テーマです。

 本作のテーマは、「たとえ実力は本物であっても、周囲は相手を肩書や評判でしか見ようとしないから、認められるとは限らない」という世の中のあり様を描きます。

物語世界

あらすじ

 温泉宿を訪れた若い武士・平田は、只者ではないという雰囲気を持つ武芸者と相部屋となります。その振る舞いや、背中の刀傷、播州の浪人であることから、武芸者が宮本武蔵だと平田は確信します。

 やがて武蔵と思しき武芸者は評判となり、宿屋に人が集まるものの、その正体は宿屋に雇われた客寄せにすぎませんでした。

 それを知った平田は、騙されたとは思ったものの、やがえ才能があっても世に出られない武芸者の悲哀を痛感し、武芸者に同情を向けるのでした。

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