真鍋昌平『闇金ウシジマくん』あらすじレビュー

2000年代

始めに

 真鍋昌平『闇金ウシジマくん』あらすじレビューを書いていきます。

 

背景知識、演出

ダーティーリアリズム

 本作は、闇金の丑嶋馨を主人公にしていて、そこにやってくる客たちが各エピソードのキーパーソンとなって、物語が展開されていきます。

 基本的に丑嶋馨は狂言回しで、エピソードの主人公は客のキャラクターのほうなのですが、作品全体の中でウシジマとそれを取り巻く人物の現在から過去に至る経緯や現在における復讐や抗争などが描かれていくため、そうしたエピソードにおいてはウシジマが主人公となります。

 スタイルはダーティーなリアリズムで、世の中の現実を生々しくリアリスティックに、けれども誇張的にブラックユーモアを交えて展開します。桐野夏生などと重なる作風です。

作風の変化

 本作は序盤と終盤でかなりテイストの変化が見えます。

 登場人物の顔が変わり過ぎなのもそうですが、丑嶋なんかは人物描写や性格描写にかなり終盤と序盤で傾向の変化が見えます。

 序盤における丑嶋は守銭奴で、金のためなら他者を破滅させることすら厭わない感じでした。しかし中盤のあたりからかなり人間味のあるエピソードが増えてきて、ウシジマによって破滅する人間はほとんどいなくなって、大抵別の人物によって殺されたり破滅したりするようになります。むしろ洗脳くんのように丑嶋が人を助けるエピソードも現れます。

 それと丑嶋も半グレですが、次第にその周辺人物のほうがカタギ相手にもエグいことを平気ですることが描かれることから、相対的に丑嶋もまともな部類に映るようになります。

物語世界

あらすじ

 丑嶋馨が経営する闇金融『カウカウファイナンス』は、10日5割(トゴ)の暴利です。

 彼の元に訪れる客は、丑嶋からの借金をきっかけに、歯車が狂っていきます。また、次第にウシジマや、ナンバー2の柄崎の過去が明かされ、ケツモチヤクザの滑川たちとの対立が描かれていきます。

総評

かなり良作

 どのエピソードも完成度が高く、安定感があります。その一方で抜きんでていいエピソードもあまりなく、美容院とかにあったらよく読むけど、最後まで通して読ませるほどの希求力はあまりないかもしれません。とはいえ、終盤の伏線回収などはかなり優れているとは思います。

ナニワ金融道との違い

 コンセプトからして『ナニワ金融道』と似てますが、作品としては正直あちらのほうが上だと思います。

 本作はあちらと差別化を図る側面としてアウトローや社会の底辺の世界をグロテスクに描いています。ただいずれのエピソードもキャラクターも、それなりにいいけれど『ナニワ金融道』ほどキャラや描写の厚みはなくて、アウトローの世界の悪役も似たようなキャラクター性のやつばっかりで被るし、債務者もあまり印象に残るキャラクターはいないし、なんでヤクザがこんなに幅を利かせていて警察が無能なんだというツッコミどころもあります。

 それでも長期連載のエピソード完結の漫画としては、安定感はあって高評価に値します。

 

 

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