最高傑作候補。板垣恵介『グラップラー刃牙』あらすじレビュー

1990年代

始めに

板垣恵介『グラップラー刃牙』解説あらすじを書いていきます。

 

背景知識、作風

作家性

 板垣恵介は、池上遼一、谷口ジロー、鳥山明、おおた慶文などから絵柄において影響されていて、作風としてはやや池上遼一(雁屋哲原作『男組』など。原作者のテイストも強いと思いますが)と近いかもしれません。
 作画時にボディビルの雑誌を参考にしているそうで、本作も誇張的な肉体美が描かれ、『北斗の拳』やジョジョシリーズ(1.2.3.4.5.6.7.8)を連想します。

伝奇

 本作は伝奇色が強い格闘漫画です。

 板垣は小池一夫主催の「劇画村塾」に入塾していて、ここから伝奇的バックグラウンドを創作において形成します。

 本作も伝奇や講談本の類を思わせる、口語的でリズミカルでケレンに満ちた語り口が印象的です。

 また、梶原一騎が作った、プロレスなどのスポーツによる伝奇アクション、格闘漫画の文脈も継承していて、アクションのバロックな機知が見どころです。

物語世界

あらすじ

地下闘技場編:東京ドームの地下に存在する地下闘技場で極秘に行われる格闘大会を描きます。17歳の高校生にして無敗のチャンピオンの主人公が範馬刃牙です。トーナメントでの鎬兄弟やマウント斗羽との試合があります。

・幼年編:地下闘技場編の4年前、中学生時代の刃牙の話です。死に逝く母のために最強の地位を通したい花山薫、母の愛を求めるために父に勝負を挑む刃牙、父としての範馬勇次郎などが描かれます。

最大トーナメント編:刃牙と、世界中から集められた選手によるトーナメント戦です。

所感

シリーズの原点

 本作はシリーズの原点です。最高傑作はやはり、個人的には『バキ』における最強死刑囚編だとは思いますが、『バキ』はトータルでみると本作に劣るので、全体的には本作が最高傑作と言えると思います。

 本作から既にシリーズの魅力としてのアクションのバリエーションの豊富さ、語り口のケレンなどは確立されていて、上質な伝奇アクションです。

 エピソードはおよそ3つの編から構成されていますが、いずれも水準が高く、好印象です。

シリーズの迷走

 個人的に、シリーズのピークは『バキ』の最強死刑囚編までで、それ以降は惰性で読んでる読者が多いと思います。

 バキシリーズは情報量が少なくて、ストーリーも物語よりもバトル中心なので、手軽な楽しさは最強死刑囚編以降のエピソードにもあるものの、それ以降は露骨にアクションのアイディアが尽きていて、プロットのデザインも一番冴えを見せたのが最強死刑囚編で、それ以降はテンポ悪かったり肩透かしな展開が多いです。

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