始めに
松井優征『魔人探偵脳噛ネウロ』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、作風
サイコサスペンス
本作はサイコサスペンスジャンルです。
このジャンルの先駆となったのはデミ監督『羊たちの沈黙』でしたが、本作もそうした作品と重なり、主人公サイドがプロファイリングを駆使した捜査を展開していきます。探偵のネウロもレクター博士のようなカリスマ性を持った怪人キャラクターです。
本作はファンタジーもの、バトル漫画の様式をうまくサイコサスペンスにフュージョンしています。
ボーボボから連作短編へ
もともと松井優征は『ボボボーボ・ボーボボ』の澤井啓夫のアシスタントだったので、初期には本作もボーボボ的なナンセンスギャグとしてのテイストが強いです。
しかし中盤から、一話完結ではなく長い一本の筋が形成されるようになっていきました。一話完結のストーリーから次第に連作短編としての全体性が形成されていく週間連載のスタイルは『暗殺教室』にも継承されます。
ストーリーもナンセンスギャグの装いを残しつつも、次第にシリアスな方向へと展開されていきます。
物語世界
あらすじ
謎を食糧とする突然変異種の魔人脳噛ネウロ。魔界の「謎」全てを喰らい尽くし、ネウロは自らの脳髄の空腹を満たせる「究極の謎」を求め、人間界へと向かいます。
人間界でネウロが最初に見つけた謎は、女子高生桂木弥子の父親である桂木誠一が殺された事件でしあ。ネウロは弥子に接触し自らの協力者(奴隷人形)として探偵を演じることを強要します。前菜として近場の喫茶店で起きた事件を『魔界777ツ能力(どうぐ)』を駆使して解決し、桂木家の謎もすぐに解いてしまいます。
こうして日常を取り戻した弥子ですが、その後もネウロの隠れ蓑として女子高校生探偵として「謎」を探すことになります。
所感
絶妙なバランス
サイコサスペンスジャンルでは 『ケイゾク』みたいな感じで、コメディにもスリラーにもサスペンスにも完全に振り切らない独特の雰囲気やムードが魅力的な作品です。
テンプレを外しているようでありながら、要所要所のエピソードは少年漫画の王道を踏まえていて、高い構成力を伺えます。
脚本家だと小林靖子(『仮面ライダー龍騎』『仮面ライダーオーズ』)と近い感じで、センス・オブ・ワンダーとエピソードのデザインの手腕、それをさらにシリアルのフォーマットで全体性を持つものとしてまとめる才覚が抜きん出ています。
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