始めに
高橋留美子『めぞん一刻』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、作風
その作家性
高橋留美子は劇画村塾に入学し小池一夫に師事しています。そして在学中の1978年、投稿作「勝手なやつら」で第2回小学館新人コミック大賞少年部門佳作を受賞しています。
赤塚不二夫、藤子=F=不二雄、ちばてつや、永井豪、池上遼一などの作家からの影響が大きく、そこからドタバタコメディ、ラブコメ、伝奇ものなどを広く手がけています。
柳沢みきおの『翔んだカップル』
本作に先駆けて、マガジン連載の柳沢みきお『翔んだカップル』という作品があります。
この作品では主人公田代勇介が共学の私立高校北条高校に入学し、上京して外国に行っているおじ夫婦宅の一軒家に独りで住むことになり、不動産屋に男性の同居人探しを依頼します。しかし不動産屋の手違いから、可愛く無邪気ながらも気の強い少女山葉圭と同じ屋根の下で共同生活を送るようになります。勇介は圭に好意を抱くものの、自分の気持ちに素直になれず、顔を合わせれば口ゲンカし…という、よくあるラブコメです。
柳沢みきお『翔んだカップル』が新しかったのは、もともと少女漫画の伝統的なジャンルだったラブコメジャンルを少年誌で展開したところで、以降の少年誌には、似たようなジャンルのものが広く見られるようになります。高橋『めぞん一刻』『うる星やつら』も同様です。
『めぞん一刻』も、ふとしたことから同じ屋根の下で暮らすようになったカップルのすれ違いとドタバタを描くものです。
物語世界
あらすじ
響子は夫の惣一郎を1年前に亡くし、気持ちの整理がつかないでいました。一刻館の大家である義父が彼女にこの仕事を薦めたのは、寂しさが紛れればという心遣いです。
一刻館の住み込み管理人として働き始めた響子は、五代裕作の想いは知りながらもはぐらかします。一方で裕作がガールフレンドのこずえと親しげにしているのを見聞きするやきもちもあります。
また響子はテニススクールで知り合ったコーチの三鷹瞬からも熱心なアプローチを受け、五代とライバルになります。
やがて大学を卒業し、就職浪人を経験した裕作は保育士を目指すようになります。犬が苦手だった三鷹は犬好きの見合い相手に恋され、相手を妊娠させたと勘違いしたことから彼女にプロポーズします。
それでも五代と響子のすれ違いは続き、響子は自ら彼に体を委ねるものの、裕作が響子の亡き夫を意識してしまい、うまくいきません。
一刻館で二人きりとなったその晩、ついに結ばれ、翌朝裕作に対して、響子はずっと好きだったことを告白します。
裕作との結婚を控え、響子は惣一郎の遺品を義父へ返すことにします。遺品返却を報告するために響子は惣一郎の墓前へ赴きますが、そこに裕作がいました。惣一郎の墓前で裕作は、響子は心に深く惣一郎を刻んでおり、そんな響子を好きになったから、響子の惣一郎への想いをも含めてずっと響子を愛していくことを誓いました。
それに対して、裕作の前に立った響子。惣一郎の遺品について、裕作は返さなくて良いと言うものの、響子は返すと毅然と答え、惣一郎の墓前で裕作との出会いに感謝します。
結婚後も裕作と響子は一刻館で暮らしています。翌年の春には長女、春香も生まれます。しばらくは共働きで、管理人の仕事も続けるつもりです。
所感
器用なモダニスト
全体的に器用なモダニストで、早い段階でスタイルを確立した作家が高橋留美子で、本作も序盤は画力が安定しないものの、しだいにめきめきと絵が上達します。
他方で、作家としての成長はあまりキャリアを通じてなく、正直本作や『うる星やつら』でスタイルが固まって、以降は割とずっと似たようなことを繰り返している印象が強いです。
傾向として石森章太郎とか松本大洋とか、映画監督だと岡本喜八とかに近いですが、要領が良すぎて悩んだ時期科少ないせいで、すぐに伸びしろいっぱい成長してしまって、キャリアよ初期に爆発的なヒットや代表作をものすものの、その後は簡単に業界に居座れる実力はありつつなんかパットしないといえばパットしない印象もあります。
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