はじめに
吉田まゆみ『アイドルを探せ』解説あらすじを書いていきます。
演出、背景知識
洗練されたモダン趣味
水野英子や西谷祥子などの影響から、少女漫画を描き始めた吉田まゆみですが、初期からその洗練されたモダン趣味は完成されていたわけではなく、キャリアの中で次第次第に確立していったものです。
本作も、そうした洗練されたモダン趣味に裏付けられ、カポーティ「ティファニーで朝食を」や、フィッツジェラルド『グレート=ギャッツビー』のような、都市生活やブルジョワ社会を舞台にした、享楽的で空虚で儚い青春の一幕が、抜群のオサレセンスによってリリカルに演出されていきます。
映画『アイドルを探せ』と主題歌
タイトルは映画『アイドルを探せ』とその主題歌「アイドルを探せ」から取っています。
映画『アイドルを探せ』のあらすじですが、そちらでは映画スター、ミレーヌ=ドモンジョの家で働らいているリシャールは、恋人ジョゼットに贈るために五千万円もするダイヤモンドを盗んだがみつかり、楽器店のギターの中にかくします。それと知ったジョゼットは、楽器店にギターを買いに行ったものの、同じ型のものが五つもあり、その上、全部人気歌手達が買っていったと知ります。リシャールは、女中ジゼールの忠告で改心し彼女とダイヤを探すことにします。ジョゼットも女友達と組んでダイヤを探すことになり、二組はギターを求めて西へ東へむかいます。リシャールとジゼールの組は、ついにシャルル=アズナブールのところでダイヤを見つけます。リシャールは自首する決心をし、ジゼールは彼が出獄するまで待つことを誓います。
主題歌「アイドルを探せ」は、恋のことを歌う内容で、愛する人のために、わたしは一番きれいになる、踊りに行くために、あなたが愛した女たちをみんなうまく締め出すために、きれいになる、といったようなことを綴る内容です。
映画『アイドルを探せ』とは、最後に真実のダイヤ(=愛)を見出すというプロットや、富や名声を求めてカップルたちが奮闘する中で巻き起こるドタバタのプロットの点が共通します。
主題歌の方も、本作のメロドラマにおける主体的な恋を彩ります。
物語世界
あらすじ
物語の主人公は、花野女子短大に通う18歳の藤谷知香子(チカ)。 チカは念願の一人暮らしを始め、ボロアパート「清和荘」で新生活をスタートさせます。 同じアパートには、漫画家志望の同級生甘露寺恵(カンロちゃん)や、バスガイドをしながら女子大生と偽って恋の相手を探す武原千明が住んでおり、彼女たちと友情を育んでいきます。
知香子は、おのぼりさんツアーで出会った爽やかな好青年岩田晃佑、中学時代の憧れでプレイボーイの永江淳一、そしてアパートの大家の息子野々原誠など複数の男性との恋愛を経験します。
最終的に、交通事故をきっかけにチカは岩田とよりを戻します。親友たちと過ごした清和荘は取り壊されることになり、カンロちゃんが浜さんから同棲を申し込まれ、みなそれぞれの道へと進んでいきます。
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